理事長ご挨拶

理事長
鳥取大学医学部附属病院長
原田 省

この度、日本エンドメトリオーシス学会の理事長を拝命いたしました。伝統ある本学会の運営を担うことの重責をひしひしと感じております。

子宮内膜症は婦人科疾患の中でも頻度が高く、日常診療で出会うことが多いcommon diseaseです。また、思春期から更年期までの生涯にわたって女性のQOLを害することから女性の健康を守る上で重要な疾患です。生殖年齢女性にとっては、月経困難症や不妊などの症状は人生設計に大きな影響を与えます。少子化の時代にあっては、次世代を育むリプロダクティブヘルスの面からも看過出来ない問題です。

子宮内膜症治療の変遷は、内視鏡手術と薬物療法の進歩の歴史です。1993年に腹腔鏡手術が保険適応を受けてからは、手術手技と機器の発達によって高度で安全な手術が可能となっています。2008年には、低用量エストロゲン・プロゲスチン(LEP)製剤と新しいプロゲスチンが子宮内膜症の保険適応を受けました。両薬剤による長期の薬物療法は、子宮内膜症治療に新しいパラダイムをもたらしました。このような子宮内膜症の臨床課題の解決に、本会は専門家による討議の場として多大な貢献をしてきました。一方、100年以上に及ぶ研究の歴史があるにも関わらず、子宮内膜症の病因は未だ明らかになっていません。世界的にもレベルの高い基礎研究の発表の場としても本会の果たしてきた役割は大きいと考えます。

世界的に見ても子宮内膜症に特化した学会は珍しく、40年の歴史と700名以上の学会員を有する本会はユニークな存在です。これまで本会の発展に尽力され、日本の子宮内膜症研究の伝統を継承された先人の努力と偉業を大事に受け継いでいく所存です。国際的には、世界子宮内膜症学会(WES)、欧州の学会(SEUD)そしてアジアの学会(ASEA)などとの交流を一層深めて、本邦の研究者と研究成果を世界に向けて発信していきたいと考えております。浅学菲才の身ですが本会の発展に少しでも貢献できますよう努力する所存です。皆様のご指導とご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。